You may already eat nothing
ドアを開けた瞬間広がった甘い香りに思わず眉間に皺を寄せてしまった。
ふと玄関の壁にかかっているカレンダーに目をやれば今日は2月14日。
世間で言うところのバレンタインデーというわけだ。
「なるほどね」
だから彼女は朝から楽しそうだったのか。
脳裏には僕のネクタイを締めながら「早く帰ってきてくださいね♪」とにっこり笑った彼女の姿が浮かんだ。
気配を消して彼女がいるであろう台所へと向かい、ドアをそっと開ける。
台所に入ると中はさらに甘い香りが充満していた。
開けたときと同じようにそっとドアを閉めるが、こちらに背を向け鼻歌を歌いながらチョコを作っている彼女は僕のことにまったく気づかない。
仮にも殺し屋がそれでいいのかと思うけど、本当に楽しそうな様子に思わず口元を緩ませてそのままドアの近くの壁に寄りかかった。
「できたーvvv」
チョコを作る彼女を眺めだして30分以上経っただろうか。
うきうきと冷蔵庫を覗いた彼女が嬉しそうな声を上げた。
どうやらチョコが完成したらしい。
壁から身を起こすと、幸せそうに完成したチョコを見ている彼女に静かに近づき後ろから抱きしめた。
「ひゃっ」
「変な声出さないでくれる」
突然のことに驚き身体を強張らせる彼女の耳元でそっと囁く。
「ひ、雲雀さん!?」
「なに」
「なっ、なんでいるんですか!?」
まだ15時ですよ!と慌てふためく彼女。
早く帰ってこいって言ったのはキミだよ。
混乱して顔を真っ赤に染めた彼女は口をパクパクさせるだけだった。
こっちを覗き込もうとする彼女の首筋に後ろから顔を埋め、雪のように白い肌にそっと口付ける。
「…ん…っ」
甘い声を漏らす彼女に満足し、顔を上げる。
彼女の白い肌に咲いた紅い花。
ああ、やっぱり紅がよく似合うね。
彼女を抱きしめている手の力を少しだけ弱めてこちらを向かせると、少し潤んだ瞳で上目遣いに睨んでくる。
まったく、そんな顔をされると虐めたくなる。
ふと目に付いたのは彼女の後ろのテーブルの上に置かれた球状のチョコ。
彼女がさっきまで嬉しそうに見ていたもの。
チョコを一つそっと手に取ると、彼女に食べていいか聞いた。
彼女は恥ずかしそうに小さくコクリと頷いた。
そんな様子を愛しく思いながらチョコを口に入れる。
「…どうですか?」
口の中に広がる甘い味。
甘いものは好きじゃない。
確かに市販のものよりもだいぶ甘さは無いが、それでもやっぱり甘いものは甘い。
こんな甘いもの、彼女以外の人間から差し出されても絶対に食べたくない。
「雲雀さん?」
反応が無い僕を不安そうに見ている彼女に少し微笑み、強く抱き寄せてキスをした。
突然のことで驚きに目を瞠る彼女に、溶けかけのチョコを口移しで食べさせる。
口の中のチョコが完全に溶けたのを確認して口を離す。
彼女の顔を見れば、さっきよりもさらに顔を真っ赤にしている。
彼女は恥ずかしいんだろう、ふいっと目を逸らす。
そんな彼女が本当に可愛くて
「もう一つ食べてもいいよね」
彼女の耳元で囁いた。
END
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後書き。
バレンタインフリー小説のヒバピンVerです。
危うく裏に突入しそうなのを何とか理性で押さえ込んだ!
一応ここは健全サイトと言い張ってますから。
これでも頑張って修正したんですけどあんまり意味無かったかも。
最初は普通の弱甘話になるはずだったんですが、手と妄想が暴走しちゃいました。
2008.02.14
配布終了しました。
貰ってくださった皆さん、ありがとうございました^^