This thought to you
(いそがなきゃ)
並中への道のりを大急ぎで走る。
気が付いたらこんな時間になっていた。
辺りは真っ暗で、静寂が包むような時間。
本当はこんな時間に出歩いちゃいけないってママンやツナさんに言われてるけど、今日だけはその約束は守れなかった。
とにかく一秒でも早く並中に!
頭にあるのはただそれだけ。
昨日の夕方、いつものようにあの人に会いに応接室に行った。
恥ずかしくて恥ずかしくて、でもどうしても伝えたいことがあったから。
「明日、わたしたい物、ある」
ただそう言うだけなのにどれくらい時間がかかったのか。
あの人はソファに座ったまま私がちゃんと言えるのをずっと待っててくれて。
言い終わった私の頭を優しく撫でて
「君が来るまで待っててあげるよ」
って言ってくれた。
本当はもっと早く渡しに行くつもりだった。
けど、初めてのチョコ作りはいろいろ大変で手間取ってしまいこんな時間。
ママンやビアンキさんは手伝うって言ってくれたけど、どうしても自分で作りたかった。
誰の手も借りずに自分だけで。
なんとか完成したチョコを持って慌てて家を飛び出した時、時計はすでに20時を回っていた。
やっとのことで並中に着いたけど、入り口の門はすでに閉められてて校舎も電気が消えて真っ暗。
当然だ。
いくらあの人が優しいからって、こんな時間まで待っててくれるはず無い。
なんだか悲しくなって、そのまま座り込んでしまう。
(イーピン、悪いことした…)
待ってて欲しいと、ワガママを言ったのは自分なのに。
約束を破ってしまったことが悲しくて
チョコを渡せなかったことが悔しくて
気がついたら頬を涙が伝っていた。
とめどなく溢れる涙を拭うことも出来ず、地面にいくつのも染みを作った。
(帰る…)
どれくらいそうしていたかわからない。
頬を伝う涙も止まりやっと落ち着いてきたので、立ち上がって門に背を向け家に帰るために歩き出す。
明日、朝一番に謝りに行こう。
謝っても許してくれないかもしれないけど、それでも。
「どこ行くの」
「っ…」
「僕に渡すものがあるんじゃなかったの?」
不意に後ろから声をかけられ、慌てて振り返れば雲雀さんが。
夢でも見てるんじゃないか。
さっきまで誰もいなかったはずなのに。
いきなりの出来事で言葉も出ない私。
雲雀さんはいつもの学ランにマフラーだけをして閉まってるはずの門の内側にいる。
内側…?
どうしてそんなところにと思ったけど、ふと頭によぎったのは昨日の約束。
(待っててくれた…?)
雲雀さんは閉まってる門を飛び越し私の前に降り立つと、目線を合わせるためにしゃがんで私に右手を差し出した。
それが何を意味するのかわかって、顔が一気に熱くなった。
今になって恥ずかしさがこみ上げて、思わず目を逸らして俯いてしまう。
胸の辺りがドキドキして、苦しい。
「こ、これ…」
どうしても顔を上げることが出来なくて、俯いたまま手に持っていたチョコを雲雀さんの右手に乗せる。
心臓がバクバクとうるさいくらい音をたててる。
「イーピン」
優しい声で名前を呼ばれ、恐る恐る顔をあげるとこっちを見てる雲雀さんと目が合った。
「ありがとう」
そう言って優しい笑みを向けられれば、よりいっそう顔が熱くなって何も考えれない。
目を逸らしたくてもその笑みに引き込まれたかのように身体が言うことを利かない。
何か言いたくて、でも言葉にならなくて。
もどかしくてたまらない。
ひょい
いきなり雲雀さんが私を持ち上げて肩に乗せた。
そして自分がしていたマフラーを一度解いて、もう一度着け直す。
ふわっと柔らかな温もりが身体を包んだと思ったら、私と雲雀さんの首には一つのマフラーが。
突然のことに驚いておろおろしている私に
「家まで送るよ」
そう言って、夜道をスタスタと歩き出した。
END
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後書き。
バレンタインフリー小説のヒバ子ピンVerです。
今回はイーピン視点で。
雲雀さんは応接室でずっとイーピンを待ってたんだけど、少しだけ眠ってる間に電気消されてて、
目が覚めて外見たらイーピンが門の前で泣いてたから急いで表に出てきたんです。
書いてて思ったんですが、これ絶対5歳児じゃないよ…。
あいかわらず打ち込んでるうちに当初の予定と全然内容が変わってます。
一応これの続き(というかオマケ)を思いついてるので(ものすごく短いですが)、近々拍手お礼にしようかと思ってます。
よろしかったらそちらもご覧下さい。
2008.02.14
配布終了しました。
貰ってくださった皆さん、本当にありがとうございました^^