キラキラ輝くシャンデリアの光の下、煌びやかに着飾った男女がホール中に響く音楽に合わせて優雅に踊る。 そんな風景をぼーっと眺めながら、ふと自分の姿に目をやれば零れるため息。

淡い黄を基調としたドレス。
滑らかな着心地から高価な生地で出来ていることは明白。 袖や裾にはレースが控えめにあしらわれており、胸元には薄紅のコサージュが飾られている。 以前演劇ギルドからもらった衣装のドレスよりも大人びたデザインに合わせて、 旅していた頃から少しだけ伸びた髪も綺麗に結い上げられた。

エステルから満面の笑みと共に渡されたドレスは、あまりにも自分には不釣合いで。 現からかけ離れた華やかなその世界に一人取り残されたよう気分になる。

(やっぱり、出るんじゃなかった…)

大きくため息を吐き、人波を抜けて壁側に移動する。

自分はたまたまエステルの顔を見に来ただけなのに。 前もって手紙で知らせていたせいか、その日に城でパーティーがあるからとエステルがあたしの分のドレスまで用意していて。 目を輝かせてドレスを差し出すエステルを見ていたら断ることもできなくて。

ちらりと辺りを見渡せば、少し離れた人垣の中にピンクの髪がちらちらと見えた。 副皇帝であるエステルは貴族達に囲まれてその対応に大忙しといった様子だ。 時折心配そうな視線を向けてくるが、こちらにくることは出来そうにない。

こっそり抜け出して、もう帰ろうか。 そう何度も思ったが、そんなことすればエステルに余計な心配をかけてしまうから実行にも移せなくて。 どうしかものか、俯いてそう思案していると

「そこの美しいご令嬢。よろしければ私と一曲踊ってくださいませんか?」

よく知っている声が耳朶に響く。 思わず声のした方をバッと振り向けば、そこにはよく知った人物が立っていた。

「なっ、おっさ・・・!?」

反射的に叫びそうになったけれど、それよりも目の前の光景に衝撃を覚え、言葉を失ってしまう。

目の前にいるのは間違いなく共に旅をしたおっさんことレイヴンなのだが、 その格好は普段の胡散臭さ全開の羽織ではなく騎士団隊長の正装。 下ろされた前髪の隙間から覗く瞳に鼓動が高鳴る。

「どうかされましたか」

周囲を気にしてなのか、聞き慣れない敬語にこちらのほうが戸惑って調子が狂う。

「な、な、なんでそんな格好してんのよっ」
「今日はシュヴァーンとして若き騎士団長殿に呼び出されたんです」

似合いませんか?なんて笑みを浮かべながらわざとらしく首を傾げて聞いてくる。 そんなおっさんの動作一つにもドキリとしてしまう自分がいて、慌てて俯いてしまう。

ムカつく。 いつもと違う態度も、姿も。

そしてそれに嫌というほど動揺している自分自身も。

なのに自分でもわけがわからないほどに胸が高鳴って、顔に熱が集まる。

「それで?踊ってはくださらないんですか」

差し出された手に顔を上げれば、柔らかな瞳がこちらを見つめていて。 躊躇いながらもその手に自分の手を重ねれば、重ねた手から伝わる温もりに、 胸の奥から温かな感情がどうしようもないくらい溢れてくる。

「ちゃんとエスコートしなさいよ」

顔が赤いのを自覚しながら小さくそう呟けば、重ねた手に力が込められて。 大きくて暖かいその手に導かれるようにホールの中心に足を向けた。



ああ、きっともうあたしはこの手を離すことは出来ない。





けしさることができないとしったこの

かんじょう のなまえをしっている








END
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TOVノーマルカップリング祭『夜空に瞬く星の欠片』提出作品
2009.11.12