20.時間




「この18年、いろいろあったわ」
「……だろうな」

ルーティの私室から続くベランダの手摺りに二人並んで寄りかかり、 夕陽によって茜色に染まったクレスタの街並みをじっと見つめる。 下方からは子供たちのはしゃぐ声に混じってカイルたちの声も聞こえる。

「もちろん楽しいことや嬉しいことばかりじゃなくて、辛いことや悲しいこともいっぱいあったんだけど。 当然よね。だってあれから18年も経ったんだもの。でもね、この孤児院を継いで、スタンと結婚して、 カイルが産まれて、ロニやたくさんの子供たちを育てて、みんな立派に成長してくれて。 少なくともアタシは幸せだって言えるわ」

そう言いながら庭で遊ぶ子供たちに視線を移す。 そっと微笑むその表情は、18年前には見せなかったもの。

「まさかスタンと結婚するとは思わなかったがな」
「あはは、自分でもビックリよ。会った頃は夢にも思わなかったわ」

手をパタパタと振りながら苦笑混じりに話すルーティ。 けれどその表情がすっと曇り、その瞳がそっと伏せられる。

「でも……アンタにはその18年がないのよね」
「……」

呟かれた言葉は今にも震えそうで。

「アタシが笑ったり、泣いたり。そうやって過ごしてきた時間がアンタには無いなんて……。 そんなの、悲しすぎるわ」

ルーティは手を伸ばし、ジューダスに向き合うとその顔を覆う仮面をゆっくりと取った。 ジューダスはそれに抵抗することなく、仮面がルーティの手に収まるのをただ見ている。 外された仮面の下から現れたのは、18年前と変わらない「リオン=マグナス」の顔。 嘗て失ってしまった大切な弟の顔をじっと見つめるルーティの紫苑の瞳が悲しみに揺れる。

「もしも………もしも、あの時私が気づいてあげてれば……。 ううん、気づいてあげれなくても手を差し伸べあげてたら………」

そうすれば同じ時間を過ごすことが出来たかもしれない。 仲間として。 そして大切な家族として。 一緒に笑って、泣いて、たまに喧嘩をして。 そうやって同じ時間を生きることが出来たのに。

ルーティの瞳から涙が零れ落ち、頬を濡らす。

「ねえ。アンタは……」

幸せだった?

最後は喉が震えてうまく声にはならず、吹き抜ける冷たい風に溶けてしまう。 けれどそれはジューダスの耳にしっかりと届いて。

「ルーティ……」

ジューダスは自分を思ってぼろぼろと涙を流す姉を抱きしめることしか出来なかった。





END

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個人設定ではD2で二人は再会しています。
じゃないと悲しすぎると思う。
私の中では二人の再会の話もきちんとあるので、いつかそれも形にしたいなとは思ってます。

それでは、読んで下さってありがとうございました。

2009.01.23