私は何も知らなかった。
ただ鳥籠の鳥のように、小さな世界の中で与えられる物だけを享受していただけ。
世界がこんなにも広いだなんて、誰も教えてくれなかった。
「ユーリ!見てください。空に虹がかかってますよ」
「ん?どこだ」
「あそこです。凄く綺麗です」
「そうだな」
晴れ渡った青空の彼方に見える鮮やかな虹を指差せば、ユーリは表情を緩めて笑みを浮べてくれた。
そんなユーリの顔を見ると私も心が温かくなって自然と笑顔になれる。
「嬉しそうだな」
「はい。虹を見たのは初めてですから。見れて嬉しいんです」
虹だけじゃない。
海も、森も、川も。
一面に広がる花畑も、人々の喧騒も。
見るもの全てが初めてで。
「ユーリ」
「どうした?」
「ありがとうございます」
「なんだよ急に」
「あの日ユーリがお城から連れ出してくれたお陰で、私はこうしていろんな物を見たり、聞いたり、感じたりすることができます」
あの日差し出された手を今でも覚えてる。
私に道を示してくれた温かな手を。
ユーリのお陰で私は鳥籠から飛び出し、世界を知った。
もちろん全てがよかったことばかりではないけれど、それでも知らなければよかったなんて思わない。
「だから、ありがとうなんです」
もう一度感謝を伝えれば、ユーリの大きな掌が私の頭を軽く撫でた。
優しい感触が心地よい。
「別に俺は何もしてないから、礼なんて言う必要ないんだけどな。城から出ることを決めたのはエステル自身だろ」
そう言って笑ってくれる。
「ユーリー、エステルー。何してるのさー。置いてっちゃうよー」
私たちを呼ぶカロルの声が耳に届く。
見れば仲間たちは少し離れた場所で立ち止まり、こちらを見ている。
気づかない内に歩みを止めていた私たちを待ってくれているらしい。
「ほら、カロル先生がお呼びだぞ」
さっさと行くか、と先に歩き出すユーリ。
「あっ、待ってください、ユーリ」
慌ててユーリの後を追えば、何も言わず少しだけ歩みを緩めてくれる。
そんな何気無い優しさが嬉しくて、ユーリの隣に並ぶ。
そしてもう一度、今度は声に出さずにありがとうを呟いた。
ありがとうを
貴方に
(知ってますか、ユーリ。鳥籠の鳥は誰かが扉を開けてくれないと飛び立つことが出来ないんですよ)
END
****************************
某Gちゃんにテイルズオススメのために書いた初書きユリエスをちょこっと加筆修正。
ユリエスはほのぼのイメージが強いです。
レイリタは喧嘩ップルですが、ユリエスはひたすら甘い妄想が(笑)
Gちゃんのみお持ち帰りOKです^v^
2009.10.05