きっとその笑顔が答え。
今も昔も遠い未来もすぐ側に
久しぶりに帰ってきた街を一人で歩いていると、公園の近くで見知った少女を見つけた。
声をかけるわけでもなく、ただジッと少女を見つめていると、流石と言うべきか視線に気付いた少女がこちらを向いた。
その瞬間、少女は頬を赤く染め、満面の笑みを湛えてこちらに向かって走り出した。
「雲雀さん!」
嬉しそうに走ってくる少女に笑みを返しながら、重たそうなランドセルを背負って転ばないだろうか…と思わず心配してしまった。
少女は近くまで来ると、上がった息を整えてから口を開いた。
「お久しぶりです!いつ並盛に戻ってたんですか?」
「ついさっき。君は学校帰りかい?イーピン」
「はい!」
元気よく答えるイーピン。
ふと思う。この少女は何故自分を恐れないのだろう…と。
初めて出逢った時から、少女は尊敬の眼差しで自分を見つめてくる。
それは彼女の師匠と自分が似ているからというのもあるが、それだけじゃないような気がする。
そして、群れるのが嫌いな自分が、何故かこの少女が側にいても気にならない。
それが自分でもよくわからない。
「ねぇ?イーピ………」
声をかけようとしたその時だった。
―――ボォン!!!―――
爆音と同時に、目の前の少女の周りに白い煙がたちこめる。
咄嗟に右腕を顔の前に翳す。
煙が消えていくのをのを確認しながら、腕を下ろす。
久しぶりに見た目の前の現象に、思わず苦笑してしまった。
五年前、目の前の少女や雷の守護者がよくこの現象を引き起こしていたが、最近はそれもめっきり見なくなった。
どうも沢田が雷の守護者に使わないように言ってるらしい。
珍しいこともあるものだと辺りを見渡せば、少し先で雷の守護者と赤ん坊が何やら揉めている。
自分には関係ない。
そう判断して、煙が完全に消えるのを待つ。
目の前に現れるのは、10年後の…自分と同じ年の少女。
「アレ?ここ…どこ?」
「………10年前の並盛だよ」
目の前に現れた少女…というより、女性に驚いて遅くなってしまったが、簡潔に今の状況を説明する。
10年後のイーピンは顔を上げると、僕の顔を見て大きな目を更に大きくして叫んだ。
「きょ……じゃなくて!雲雀さん!!?」
何か言いかけていたのが少し気になったが、僕は「やあ」と声をかけた。
イーピンは焦りながら辺りを見回す。
そして雷の守護者の姿を捉えた瞬間、盛大に溜息をついた。
「………ランボですね」
「そう」
「確か、この頃ってツナさんに10年バズーカ使わないように徹底されてた気がするんですけど?」
「最近使ってなかったんだけどね。状況が状況だからじゃない?」
「ああ……そうですね」
赤ん坊にからかわれて泣きじゃくる雷の守護者。
その姿を見てイーピンは納得した。
「まぁ、5分経てば元の世界に戻れるんだから、大人しく待ってればいいよ」
「そうですね」
僕の言葉に納得したイーピン。
だがすぐにクスクスと笑い出したので、僕は首を傾げた。
「何笑ってるの?」
「いえ…きっと10年前の私も10年後の雲雀さんを見てビックリしてるだろうな〜って思って」
「は?」
「だって…雲雀さん、10年前から全然変わらないんですもの」
それって僕が年をとってないということだろうか?
そんなことを思っていると、イーピンは更に笑いながら言った。
「実は私、10年後でも雲雀さんと一緒にいたんです。雲雀さん着物着てて…そしたら今、目の前にスーツを着た雲雀さんがいたからいつ着替えたんだろうって驚いてしまったんです」
「………へぇ」
「きっと10年前の私も、着物を着た雲雀さんを見ていつ着替えたんだろうって驚いてると思います」
可笑しくてたまらないと言った感じで笑い続けるイーピンを横目に見ながら、僕は少しだけ気になったことを尋ねてみた。
「着物ってことは、10年後の僕は自分のアジトにいるんだよね?」
「え…あ、そうです」
「そうだよね。だって僕、アジト以外の場所で着物着ることないし。で、アジトにいるから君もそんな格好してるの?」
「へ?……って、ああああ!!!!」
首を傾げ、イーピンは自分の胸元を見る。そして顔を真っ赤にして叫んだ。
10年後のイーピンも着物姿だった。
先程彼女が現れた時、思わぬ姿に驚いて咄嗟に答えることができなかったのだ。
「だって!雲雀さんがいつも私の分まで新調してくれるから…!」
「そうなんだ。それ、似合ってるよ」
「ありがとうございます……って違うううう!!!」
赤くなった両頬を手で押さえて涙ぐむイーピン。
なんだか可愛いな…と柄にもなくそう思う。
未来のことは知らないほうがいい。
それは五年前、自分が10年後に送り込まれた時に思ったこと。
でも…これを聞いたら、さっきまでの疑問がほんの少し解決されるかもしれない。
「ねぇ?」
声をかけられたイーピンは赤い顔のまま僕のほうに目を向ける。
僕は尋ねた。
10年後のイーピンに。
「君は10年後も僕の側にいるの?」
「おかえり、イーピン」
「アレ?雲雀さん…?」
先程と同じように白い煙がたちこめ、そこから小さな少女が現れる。
状況が掴めずキョロキョロ辺りを見渡す少女に先程の女性の姿が重なる。
「5分たったから戻ってきたんだよ。わかる?」
「あ…はい。だって雲雀さんがスーツだから」
「それ、10年後の君にも言われたよ」
クスクスと僕が笑うと、小さなイーピンは恥ずかしそうに俯く。
その姿に、ああ…自分が知っているイーピンだと嬉しくなる。
先程のイーピンは、イーピンであってイーピンじゃないから。
「10年後はどうだった?」
そう尋ねると、イーピンは顔を真っ赤にして目をキョロキョロさせる。
その態度が何だか気にくわない。
「何?10年後で何かあったの?」
「そんなこと…ないです、よ」
「………ちゃんと言わないと、もう修行に付き合わないよ」
「ええ!!?」
意地悪くそう言うと、イーピンは困ったように俯く。
黙って待っていると、漸くイーピンが重い口を開いた。
「10年後の雲雀さんに……抱っこされて、おでこに…キスされ、まし……た」
「………………」
やられた。こんなことなら自分も10年後のイーピンを抱きしめておけばよかった。
ほんの少し10年後の自分を恨めしく思う。
イーピンに気付かれないように溜息をついて、僕は手招きをする。
少女は首を傾げながら、僕の側に来る。
そんな少女の頭を僕は優しく撫でた。
感謝を込めて。
消える前に微笑んだ彼女にも感謝を込めて。
今も昔も遠い未来も、君は僕のすぐ側にいてくれるんだね。
END
*******************************************
おねぇさまのサイト100000HIT企画でリクさせていただいたヒバピンです!
素敵ヒバピンありがとうございます!!!
悶えすぎてほんと鼻血止まんない…!(*´∀`*)
二人は永遠に一緒にいればいいと思うんだ!
それこそ地獄の果てまでも(←天国とは言えない)
お言葉に甘えてお持ち帰りさせてもらいました^^
返品なんて絶対にしませんYo。
本当にありがとう(*´▽`*)
るりこぱんださんのサイトへはこちらから
『六花』
2008.11.16