「あ、あのさ…ティア」
「ルーク?どうかしたの」
宿の廊下で呼び止められて振り返れば、視線を泳がせてこちらを見ようとしないルークがそこにいて。
明らかに挙動不審なルークの様子を不思議に思いながらもとりあえず答えれば、何か言いづらそうに口をもごもごとさせている。
「ルーク?」
少し待ってみてもルークの口からはっきりとした言葉が発せられることがなくてもう一度名前を呼んでみれば、ルークは意を決したようにこちらに視線を合わせた。
その頬は何故かうっすらと朱に染まっていて、どうしたのかと小さく首を傾げる。
「ティア、その……これ」
言葉と共に差し出された手には何かが握られていて。
ルークの手がそっと開かれて現れたものを見て思わず息を呑む。
「これは……」
「ほら、魔界にはセレニア以外の花は咲かないって言ってただろ。でもこうすれば魔界にでもいろんな花を持って帰れるんじゃないかって思って」
ガイに教えてもらったんだけど、と照れくささを隠すように頭を掻きながら告げるルークの、その手の中にあるものから目を離せない。
ルークの手の中にあるのは短冊形の淡い色をした紙が数枚。
上部には小さな穴が開いていて、そこに細いリボンが通してある。
その形からそれが栞であることはすぐにわかった。
そしてこれらはただの栞ではなかった。
少し曲がった紙の形や長さが微妙に揃ってないリボン。
数枚あるその栞全てに薄紅や萌黄など種類の違う色とりどりの花が押し花にされて添えられており、その美しさを保っている。
それらがこれが手作りであるということを私に教えてくれる。
自分のためにルークがこの栞を作ってくれたのかと思うと胸の奥が温かくなった。
彼の優しさが何よりも嬉しい。
ルークの優しさに涙が零れそうになるのをぐっと堪える。
涙を流すよりも先に、もっと大事なことがあるのだから。
ルークの手にあるその栞たちを受け取って胸の前でそっと抱きしめるように包み込む。
栞一枚一枚からルークの気持ちが伝わってくる気がした。
それからルークの新緑の瞳を見つめてお礼を告げた。
「ありがとう。大切にするわ」
自分の精一杯の笑顔とともに。
お礼には
満開の笑顔
を
END
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ルクティアオンラインアンソロジー『白い花と日記帳』提出作品
2009.10.01