散りし命の儚さや





「悲しいですね…」


彼女の口から小さく零れた言葉。
何がなんて聞かない。
彼女が何を思ってその言葉を発したのかは分からないけれど。

庭にある一番大きな樹の下。
こちらに背を向け佇む姿はとても哀しげで、もしかしたら泣いているのかもしれない。
彼女ははらりと舞い降りる一片の花弁にそっと手を伸ばし、包み込むように抱きしめる。
その儚い命を守ろうとするかのように優しく、けれど強く。

数日前まで満開に咲き誇り人々を包み込んだ美しい桜も、今ではそのほとんどが地面に散り、大地の養分になるのを待っているだけ。

どれほどの人間が桜が花開くのを待ち侘びただろう。
どれほどの人間が桜の開花に胸を躍らせただろう。
どれほどの人間が…

儚く散りゆく花弁に心を痛めているのだろう。


そして


彼女は散りゆく花弁に何を想っているのだろうか。




ひらり



静かに吹き抜けた心地よい春の風が、樹に咲く最後の一片を空へと舞い上げる。
ひらひらと風に舞う花弁はさながら蝶のように優雅で。
彼女は風に踊る自らの髪を抑えながらその様子をじっと見ている。
ただひたすらに。
その景色を心に焼き付けるように。





「悲しいですね…」





そう言いながらゆっくり振り返って切なげに微笑む彼女の頬を一筋の涙が伝った。







END

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以前から書きたいと思っていた桜のお話。
綺麗に咲き誇る桜も好きなんですが、散っていく桜も好きなんです。
ちょっと切ない系を目指して書いたんですが、見事に玉砕しました´д`;;
イーピンが何を思ってるのかは皆さんのご想像にお任せします。

2008.04.13