*ヒバピン*
応接室の扉を開くとどことなく違和感を感じて、
愛用のトンファーを構え、そのまま室内へと歩を進める。
室内を見渡せば、机の上に違和感の元があって、
警戒を解き、トンファーをおろした。
そのまま机に近づき、そこに置いてある物にそっと手を伸ばす。
赤い包み紙でラッピングされたそれからわずかに香る甘い香り。
それだけで包みの中身が何なのか分かり、知らず口端が上がった。
(ああ、今日だったんだ)
毎年忘れるこの行事を、贈られてくる小さな包みで思い出す。
それがここ数年で当たり前になった。
(あの子も相変わらず律儀だね)
何の見返りがあるわけでもないのに、これを置いていったであろう
恥ずかしがり屋の少女の顔が脳裏に浮かぶ。
今まで贈られた物に対して何かを返したことなど一度もない。
(今年は何か返してみようか)
それはほんの気まぐれ。
だが、数年分のお返しをした時に少女がどんな反応をするのか。
それを考えると一ヶ月後が少しだけ待ち遠しく感じた。
END