*ヒバピン*


心地よいまどろみから意識を浮上させれば、一番に目に入ったのは誰よりも愛しい人の顔。
カーテンから差し込む淡い光がその顔を照らしている。

彼の腕の中、互いの体温を感じながら眠ることが当たり前になってからもうしばらく経つが、 彼の寝顔を見飽きることは決してないから不思議だと思う。

整った顔立ちは恐ろしいほどに美しく、見るものを惹きつける。
今は閉じられている瞳は鮮やかな黒で。
その瞳を見た瞬間、私は彼に捕らわれた。

起こさないように慎重に手を動かし、彼の黒髪に触れれば さらさらとした感触が気持ちよくて思わず口元が緩む。

私も黒髪だけど、彼の髪の方がさらさらで、綺麗な色をしていると思う。
同じ黒でもこうも違うのかと感心してしまう。
以前そう告げたら、そんなことはないと否定されたけど。

「ん……」

彼が小さく身動ぎをしたので慌てて動きを止めるが、 すぐにまた規則正しい寝息が耳に届く。

彼は普段ほんの少しの物音や気配でもすぐに目を覚ますと以前ツナさんが言っていたが、 私の気配に対しては無防備に眠り続ける。
それだけ信頼されてるのかと思うと、心に湧き上がる幸福感。

傍にいることが当たり前だと、そう思ってもらえてるようで嬉しくてたまらない。

そろそろ起きる時間だけど、もう少しだけこの幸福を感じていたい。
そう思って、もう一度彼の髪に触れた。







END