*ヒバピン*


もうすぐ沈んでしまうであろう夕陽に照らされて、のんびりと砂浜を歩く。
少し前を歩く雲雀さんの足跡をなぞるように一歩一歩踏みしめて。
時折打ち寄せた波飛沫が足元を濡らしていくが、その冷たさが逆に気持ちいい。

ふと視界が何かを捕らえた気がして、しゃがみこんで砂を掃ってみれば、 淡いピンクの小さな貝が出てきた。
力を入れれば壊れそうなそれをそっと手に取って眺めれば、 いつの間に傍に来たのか、彼が覗き込んで来たので 見えやすいように立ち上がる。

「なにそれ」
「桜貝っていうんです。綺麗ですよね」
「ふーん」

興味なさげに返事をして再び足を進め始めた雲雀さんを追いかけようとして、 ふと手に持ったそれをどうしようかと思う。
捨てるのはもったいない気がするが、かといって持って帰るのもどうなのか。
一瞬の逡巡の後、雲雀さんに追いつくため小走りに足を進める。
手に桜貝を持ったまま。

何か嫌な思い出があるらしく、桜が好きではない雲雀さんでも、 これなら好きになれるのではないか。
なんとなくそう思ったから。






END