*ヒバピン*


ふわりと鼻を掠めた香りにぼんやりと意識が浮上する。
うっすらと瞼を持ち上げれば、カーテンの隙間から零れる朝の光が眩しい。
覚醒しきれていない頭で、何の香りだろうかとゆっくりと頭を動かすと ベッドのすぐ横の椅子に腰掛けていた雲雀さんと視線が絡む。

「おはよう、イーピン」
「ん……おはよう、ございます…」

少し重い上半身をゆっくりと起こし、小さく頭を下げる。
眠気によってふらふらと揺れる身体をなんとか支えながら周りを見てみれば、 室内に広がる香りが雲雀さんの手にあるコーヒーのものだとわかった。
コーヒーがテーブルに置かれ、温かい手が解いたままの髪に触れる。

「眠いならまだ寝てていいよ」
「…ん……」

髪をゆっくりと撫でる優しい感触に、睡魔が再び襲ってくる。
力の入らない身体を再び横たえれば、その上からふわりとシーツがかけられる。
シーツに広がった髪が再び優しく撫でられる。
完全には開いてなかった瞼をその心地よさに耐えられず閉じた。

「おやすみ、イーピン」

言葉と共に瞼に触れた温かなものがなんなのか、 それを理解する前に意識は眠りの彼方に消えた。






END