*ヒバピン*


桜の花が好きだった
桜並木を歩くたび、心が弾んで笑顔がこぼれた
ピンクに染められた世界には
彼との思い出がたくさんあるから
降りしきる花びらに包まれ
二人で笑いあった

桜の花が嫌いだった
桜並木を歩くたび、胸が苦しくて涙が溢れた
ひらひらと舞い落ちる花吹雪が
彼を連れ去ってしまったから
遠く去っていく背中に
一人泣き崩れた

「じゃあ今はどうなの?」
「今…ですか」

今は、正直わからない
好きなのか、嫌いなのか

喪失の傷は心の奥にいつでも存在して
桜並木を歩けば今でも涙が出る

でも、振り返ればいつでも彼がいてくれて
そっと涙を拭ってくれる
名前を呼べば
少しだけ微笑んでくれる



その瞬間はとても好きなのだ




END