*沖千*
「総司さん、見てください。向日葵が咲いてますよ」
千鶴が指差す先を見やれば、鮮やかな黄が風に揺れ踊っている。
嬉しそうに微笑みながら向日葵を見つめる
千鶴の横顔を眺めれば自然と口元が綻ぶ。
ゆっくりと、静かに流れる時間。
誰かと争うことのない、穏やかな日々。
心地よい自然の恩恵と千鶴だけが全てのこの生活は
数年前の自分が決して考えなかったもの。
刀を手にすると同時に捨ててしまったはずの平穏が
こうしてこの手にあることが少し不思議に感じる。
「総司さん?」
少しぼんやりとをしたせいか、小さく首を傾げ、
どうかしましたか、と不思議そうに見上げてくる千鶴に、
なんでもないと応えて繋いでいる手に少し力を込めれば、
頬を朱に染めながらも花が咲き綻ぶように笑みを浮かべてくれて。
それだけでこんなにも心が満たされる。
ただ隣に千鶴がいて、笑っていてくれれば
それだけで十分で、他に何もいらないと思えるほどに。
ああ、これが幸せというものなんだろう。
END