「おいで」
差し出した手を掴んだのはとてもとても小さな手
「うん、見つけたよ」
『そうか、手間掛けたな』
「別に」
『すぐに迎えを寄越すから、もう少し頼むぞ』
「いいよ。これくらい」
『そうか』
ドカドカドカ、バターン
「じゃ」
携帯を耳から離し、小さくため息を吐く。
切る前に聞こえた耳障りな音は多分草食動物が慌てて家を飛び出した音だろう。
あの様子じゃここまで10分もかからない。
近くにある机に腰掛けて視線を部屋の中央に移す。
ソファに腰掛ける彼女は俯いて、顔をあげようとしない。
冷えた身体を温めさせようと渡したホットココアの入ったマグカップをぎゅっと握り締めている。
身を縮ませるように座っているせいで、ただでさえ小さな身体が余計に小さく見えて。
「すぐに迎え来るって」
ビクッと跳ね上がる小さな肩。
恐る恐る向けられた瞳は再び泣き出しそうなほど揺れていて、普段の彼女からは想像もつかない。
赤ん坊から連絡があったのは数時間前。
なんでも彼女と牛柄が遊んでる時に、誤って沢田の母親が大切にしていた置物を壊してしまったとか。
それで落ちこんだ彼女が家を飛び出し、夕方になっても戻らず大騒ぎになったらしい。
心当たりを探し歩き、見つけ出した時にはすでに辺りは真っ暗で、彼女はベンチに蹲るように座っていた。
名前を呼べば、涙でぐしゃぐしゃに濡れた顔がゆっくりと動き、こちらを見た。
その瞳はまるで捨てられた子犬のよう。
どこにも帰る場所がないとでも言わんばかりだった。
僕の差し出した手に、彼女は縋るようにその手を伸ばした。
その手はとても小さく、彼女の心を映すように震えていて。
安心させる為、彼女を抱き上げその手を優しく握ってあげた。
ゆっくりと、一定のリズムで小さな背中をさすり、彼女が落ち着くのを待ってから応接室に連れてきた。
「…ヒバリさん……ごめん、なさい…」
しばらくの沈黙の後、かすれるような弱弱しい声が耳に届く。
彼女は揺れる瞳でこっちを見つめる。
「何を謝ってるの」
「イーピン…めいわく、かけた…」
「別に迷惑なんて思ってないよ」
「でも…」
それでもなお言い募ろうとする彼女に、腰を上げて近づくとゆっくりとその頭を撫でた。
本当に迷惑だなんて思ってないっていうのに。
ただ、赤ん坊から連絡を受けた時、心の底がすぅーっと冷えるような感覚に襲われた。
その時感じたものが何なのかわからなかったけれど。
気がつけば彼女を探す為に歩いている自分がいて。
その姿を見つけた時、ホッとしたような気がする。
「…迎え、来たみたいだね」
徐々に近づく廊下を走る音。
まったく、廊下を走るなんてあの草食動物もいい度胸をしてる。
本当なら咬み殺すところだけど、今日は彼女に免じて許してあげるよ。
そっとため息を吐いて、見上げてくる彼女に帰るように言った。
彼女は小さく目を伏せ、座っていたソファからポンと飛び降りると、とぼとぼとドアに向かう。
小さな背中はどう見てもまだ落ちこんでる。
「イーピン」
ドアを開け、こちらに小さくお辞儀をして出て行こうとした彼女を呼び止める。
小さく首を傾げながら次の言葉を待つ彼女に、学ランのポケットから取り出した飴を投げると、危な気ながらも何とか受け取る。
「?」
「それあげる」
「…あ、め?」
「それでも食べて早く元気出しなよ」
そう言えば、彼女は「謝々」と言って出て行った。
出て行くときに一瞬見せた笑顔はいつもの彼女のもので
これならきっと明日にはいつもの笑顔を見せに来るだろう
雨のち曇り、そして晴れ
僕は君の笑顔を見るのが嫌いじゃない
END
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後書き
携帯サイト12345HITキリリクでごろぉ様より
『とにかく子ピン』というリクだったんですが子ピンというより雲雀さんが出張ってる(@д@)
し、師匠…こんなものでヨロシイデショウカ???
雲雀さんはピンが心配だったんですが、心配するって感情がいまいち分かってない…みたいなのを書きたかったんです( =д=)
でも、全然ダメだった…。
返品受け付けますので遠慮なく言ってください。
読んで下さってありがとうございました。
2008.04.20