「きゃっ」

小さな悲鳴の後、何かが落ちたような大きな音と、次いで何かが割れるような音が厨の方から響いてきた。 それを聞きとめた土方は読んでいた書物を机に置き、小さくため息を吐くと腰を上げて立ち上がる。

そして厨についた土方の目に映ったのは、厨の無残な状況。 床に座り込み呆然としている千鶴とそのすぐ側に転がる脚の折れた踏み台。 そして周囲に散らばっている割れた食器類。

予想通りともいえる光景に、土方は今度こそ大きくため息を吐いた。 すると今まで心此処に在らずという状態だった千鶴の肩がびくりと跳ね上がり、 ぎこちなく首を動かして土方の方を見る。

「……」
「……」

視線を交差させたまま、何とも言えない沈黙が二人の間に落ちる。 数十秒の後、沈黙を先に破ったのは千鶴の方だった。

「……すみません」
「ったく、お前は」

申し訳なさそうに項垂れる千鶴の元へと行き、ほらっと手を差し出せば、千鶴の小さな手が重ねられる。 土方はそのまま千鶴の身体を起こすのを手伝う。 土方の手に引かれて立ち上がった千鶴は着物についた埃などを軽く叩いて落とし、 それからすぐ隣で腕を組んでその様子を眺めていた土方に向き合った。

「で?おまえは何をやってんだ」
「えっと…」

土方の呆れを含んだ視線と自分が引き起こした周りの状況に居た堪れなく感じながらも、 千鶴は事情を掻い摘んで告げる。



夕餉の準備をするために厨へと向かったまではよかったが、普段使っている食器が昼餉の際に欠けてしまった事を思い出し、 食器を置いている棚の上段に置いてある予備の食器を取ろうとして。 背伸びしても届かなかったので踏み台を使い、食器に手を伸ばした。

踏み台のお陰でなんとか食器を無事に取ることができ、ほっとしたのも束の間、 踏み台の脚がいきなり折れ、そのまま体勢を崩して落ちてしまった。 そして手に持っていた食器を床に落としてしまい、それが粉々に砕けてしまった。 それが先ほどの大きな音の正体だった。



「手が届かない物は俺が取ってやるから声をかけろと前に言った気がするんだが」
「それは、その……声をかけようかとも思ったんですが、歳三さん読書してたから邪魔しては悪いかと思いまして……」

話を聴き終わった土方の口からの指摘に、千鶴は口篭りながらも答える。 確かに以前にも似たようなことがあり、その時にそう言われた。 千鶴もそのことを忘れたわけではなかったが、頼もうかと部屋をちらりと覗いた時、 書物を読んでいた土方の目があまりにも真剣だったから声をかけるのが憚られたのだ。

すみませんと千鶴が小さな声でもう一度謝罪を口にすると、土方は僅かに嘆息して千鶴の頭を軽く撫でた。 千鶴が驚いて見上げた先にあったのは先ほどまでとは違う柔らかい眼差し。 口元には淡い笑みさえ浮かんでいる。

「怪我はしてないな」
「あ、はい。それは大丈夫です」
「ならいい。こんなことでお前に怪我されたら堪ったもんじゃねぇからな」

注がれるその声音と眼差しはとても穏やかで、大切にされているのだと、そう思える。 それが嬉しくて、千鶴もふわりと微笑みを返した。




溢れるのは君への

愛しさ






END

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ぐーちゃんに捧げる土千。
以前絵チャのときに素敵ながたやんを描いてもらったお礼…のはずがあいかわらず意味不明&中途半端で申し訳ない(>m<)
がたやん難しいな。
こんなのでよかったら貰ってやってくださいな。

こちらは篠陸ぐー様のみお持ち帰り可です。

2009.09.17