今はまだ…




優しい春の陽射しに包まれたある日

神子の強い希望により、怨霊の封印は休みとなった

本当ならば休んでいる暇などないのだが、神子も八葉も疲れが溜っているのは確かなので、九郎も今回はこの休みを了承した



各々がこの短い休みを思い思いに過ごす中、九郎は弁慶の部屋の前に来ていた





「弁慶!!入る……ぞ………?」


勢いよく襖を開けた九郎だったが、目の前に広がる光景に、目を奪われた


所狭しと物が置いてある部屋の中央に広がる鮮やかな黄金



それはあまりにも美しく、触れれば消えてしまいそうなほど儚げで………


「……弁慶!?」

ふと我に帰り、急いで傍に寄り、呼び掛けてみるが返事はない

「……ッオイ!?」



返事がないことに焦り、さらに顔を近づけてみると




微かに聞こえる規則的な寝息



「………なんだ………寝ているのか………」

病などではないことにほっと息をつき、そっと弁慶の傍らに腰を下ろす



改めて見る弁慶の顔はとても穏やかで、普段の彼からは想像もつかないほど無防備だった



「………まったく………あんまり心配させるな」

九郎はそう言いながら弁慶の髪をそっと撫でた

「んっ………」

くすぐったいのか、弁慶は身じろぎをした



そんなわずかな動作さえ愛しいと思ってしまう




いつからだろう




弁慶のことをこんなにも愛しいと思うようになったのは………









初めて逢ったのは京の五条大橋で


あの頃はお互い徒党を組んで敵対し、幾度も剣を交えた



しかし何時からか共にいるようになり、今ではそれが当たり前のことになっている


弁慶が傍らに居てくれるから迷うことなく前だけを見つめていられる





ただ一人の愛しく、かけがえのない存在




今はまだ伝えることはできないけれど





「………いつか………いつかこの戦が終わったら………」




俺の想いをお前に伝えようか









愛していると





END