動き出した世界
イタリアにあるボンゴレ本部内のボスの執務室。
そこには二人の男女が向かい合ってソファに腰掛けていた。
カチャカチャとカップの音だけが室内に広がる。
ツナは手に持っていたカップをテーブルに置くと、美味しそうに紅茶を飲むイーピンを真剣な眼差しで見据え硬い声で尋ねた。
「イーピン。何があったの?」
「別に何もありませんよ?」
ツナの質問にきょとんと首を傾げながら答えるイーピン。
だがツナは真剣な表情のままで更に尋ねた。
「何も無い訳ないだろ。せっかく受かった大学を辞めてまでボンゴレに入りたいだなんて」
数時間前、任務で日本に行っていた雲雀がイーピンを伴って帰ってきた。
イーピンは殺し屋を辞めて日本で普通の生活をしているはずなのに。
予想もしていなかった出来事に驚く一同を前に、イーピンはツナに歩み寄ると
「私をボンゴレに入れてください」
真剣な顔をして深々と頭を下げた。
イーピンが殺し屋を辞めたいと言ったのは彼女がまだ10歳になるかならないか位の時。
イタリアへ行くことを決めたツナにイーピンは涙を堪えた瞳で殺し屋を辞めると伝えてきたのだ。
一瞬驚いたツナだが成長したイーピンが殺し屋を辞めていることを知っていた。
10年バズーカで過去に来たイーピンには何度も会っている。
だから優しく微笑みイーピンを抱きしめてお疲れ様と言った。
イーピンはその言葉で堪えてきた涙が溢れ出し、ツナにしがみついて声を殺して泣いた。
まるで小さな身体に溜め込んできた全てを吐き出すかのように。
イーピンが何を思って殺し屋を辞めると決めたのかツナにはわからない。
たぶん並盛での平和な暮らしがイーピンにとって何かを思わせたのだろう。
ツナはイーピンが泣き疲れて眠ってしまうまでずっと抱きしめ、その頭を撫でてやった。
イーピンは持っていたカップをテーブルに置き、目の前に座るツナに少しだけ寂しそうに微笑んで口を開いた。
「本当に何もないんですよ」
イーピンはくすっと笑い、話を続ける。
「沢田さん、元々殺し屋を辞めた理由だってそんなにたいした理由じゃないんです。
ほら、昔沢田さん達がボンゴレリングをかけて戦ったことがあったじゃないですか。
その時、私はそこにいたのに何にも教えてもらえなくて。
何があったのか教えてもらったのは結局全部終わった後。
ランボが守護者に選ばれてて、私は選ばれなかったって聞いた時正直悲しかったんです。
それって私がランボよりも弱いって言われたみたいで。
結構ショックでした。
殺し屋としての私は皆さんには必要ないのかなって。
今考えると考えすぎだなと思います。
沢田さん達は10年後の私が殺し屋を辞めてるって知ってたから巻き込まないようにしてくれたんだってわかります。
それは皆さんの優しさだって。
でもあの頃の私は何もわかってなかったから。
だから辛くて悲しくて。
自分の居場所が無いように感じちゃって。
殺し屋を辞めようと思ったんです」
バカみたいですよね、と恥ずかしそうに笑うイーピンにツナは何も言えなかった。
幼かったイーピンに何も言わなかったのは巻き込まないためだけじゃない。
イーピンがそんなに思いつめてるなんて考えてもみなかったのだ。
あの頃のツナは迫りくる出来事に気を取られていた。
だから残された者達の気持ちなんて考える余裕もなくて。
それが小さな少女を苦しめていたなんて。
「一人で並盛に残って学校に行って。
普通の暮らしはたしかに楽しかったです。
だけどやっぱりそこにも居場所はありませんでした。
周りには誰も居なくて、一人きりで。
昔よりもずっと孤独で。
でも、雲雀さんが一緒に来る?って言ってくれて。
初めて自分の居場所が出来たような気がしたんです。
雲雀さんが私を必要としてくれるのなら私は雲雀さんの隣で生きようって。
雲雀さんとともに生きることを決めました。
そのためなら殺し屋に戻ることも構いません。
それに、私の力で少しでも皆さんに恩返しができたらと思いますし。
だからお願いします。
私をボンゴレに入れてください」
数時間前と同じように頭を下げるイーピン。
ツナはそんなイーピンを見て一度目を瞑り考え込んだ後、目を開きボスの顔になりイーピンに告げた。
「わかった。イーピンのボンゴレ入りを正式に認めるよ」
その言葉にホッとしたように顔を上げるイーピン。
「ただし」
「はい?」
「無茶だけは絶対にしないようにね。イーピンは俺にとって大事な妹なんだから」
先ほどとは違う兄の顔で微笑みそう言うと、ツナは立ち上がってイーピンの傍まで行くとそっと抱きしめた。
「さ、沢田さん!?」
「ごめんねイーピン」
「?」
「気づいてやれなくてごめん」
「…」
「寂しい想いさせてたんだね」
「…沢田さん……」
「本当にごめん。もうそんな想いさせないから」
「うっ…」
ツナはイーピンをよりいっそう強く抱きしめた。
イーピンは頬を伝う涙を拭うことも出来ずツナの胸に顔を埋め、声を殺して泣いた。
あの日と同じように。
だけどあの日と違うのは、大切な人達に必要とされているということ。
傍にいてもいいのだと言ってもらえたようで心が満たされる。
まるであの日できた心の氷が溶けたようにイーピンは泣き続けた。
「もう大丈夫みたいだね」
執務室の前の壁に寄りかかっていた雲雀はそう呟くとその場を立ち去った。
今だけは兄妹二人だけにしたほうがいい。
そう思って。
END
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後書き。
Happy Birthday ぐーちゃん!!!
誕生日プレゼントなんとか間に合った…。
かなりギリギリだけど。
以前約束したヒバピン捧げます。
ヒバピンのはずだったんだけどなんかツナピンっぽくなってしまった。
ごめん!!(><)
返品OKだから^^
誕生日本当におめでとー♪
ぐーちゃんのみお持ち帰り可です。
2008.02.24