(その1)小さな贈り物
世の中は黄金週間。
いつもは生徒たちの喧騒に包まれる校舎も静まり返っている。
だが、休日だろうが連休だろうが
並盛中風紀委員長の雲雀恭弥は応接室にいた。
積み上げられた書類に滑らかに
風紀委員専用の鉛筆を走らせる。
―― コン、コンッ ――
ノックの音に入るように答えると
草壁がお盆にお茶とお菓子をのせて姿を現した。
「委員長、お客様です」
「客?」
草壁の足元を見やると、そこにはちょこんと弁髪の子ども。
机の上にお盆をのせると草壁は静かに扉の向こうに消えた。
「どうしたの、イーピン」
作業を中断して近くにより、目線を合わせるようにしゃがむと
子どもはずいっ、と両手を差し出した。
小さな手に握られているのは
四つ葉のクローバー。
「ヒバリさん、きょう、おたんじょうびって、ハルさんが」
どうやら誕生日プレゼントらしい。
そのことをすっかり失念していた雲雀は軽く目を見張り
しばし固まった。
とりあえず、顔を真っ赤にしたイーピンの小さな手から
四つ葉のクローバーを受け取る。
「ヒバリさん、おたんじょうびおめでとう!」
彼の手にそれが渡るのを確認すると
イーピンは笑顔でそう言った。
その笑顔に雲雀はくしゃり、とイーピンの頭を撫で
「ありがとう」
と穏やかな瞳でそう返した。
(休日をこんなに嬉しく思ったのは初めてだよ)
(その2)浮雲は時に一つ処に留まる
学校から帰り、部屋に入ったイーピンは思わず固まってしまった。
深呼吸をして、瞬きをして、『それ』を確認する。
自分のベッドで雲雀恭弥が眠っていた。
出来るだけ気配を消して近づくと
むくり、と起き上がり、眠そうな顔のまま
欠伸をしながら伸びをする。
「おかえり、イーピン」
そして当たり前のようにそう言った。
「雲雀さんなんでここに?!」
まだ現状を把握出来ていない彼女が慌ててそう尋ねると
「沢田綱吉が休暇をくれた」
と、短く答え欠伸をしてさらりと続ける。
「誕生日くらいちゃんと恋人と過ごすようにって」
ピタリとイーピンは再び固まってしまう。
世の中は明日からゴールデンウィーク。
まさか彼と過ごせると思っていなくて、
誕生日プレゼントはまだ迷っていって、
明日買いに行こうと思っていたのに。
「あ、あの、私…」
「いてくれるだけでいいよ」
少し不敵に笑って、三つ編みを引っ張り
雲雀はイーピンをすっぽりと腕の中に収める。
そして彼女が抗議する前に再び眠りに落ちてしまった。
どうやっても抜け出せない彼の腕の中
イーピンは彼に休暇をくれた綱吉に感謝し少しだけ呪った。
そして今日の夕食の献立と、これから彼と過ごす時間と
誕生日には手作りのケーキを食べてもらおう、と
そんなことを考えながら安心できる体温に体を預けて眠りについた。
(その3)君は覚えてる?
桜の樹も薄紅から新緑に移り変わった頃
雲の守護者のオフィスの片付けの手伝いをしていたイーピンは
彼の机の上にあるものを見つけた。
押し花にされた四つ葉のクローバーの施された小さな栞。
彼の雰囲気に少しそぐわないそれを彼女は手に取った。
「何してるの?」
急に作業の手を止めたイーピンを
雲雀はいぶかしむ様に見つめる。
「いえ、雲雀さんって意外と可愛いもの好きなんですね」
眉根を寄せた雲雀にイーピンはその栞を見せた。
「…ワォ。覚えてないの?」
何を、と彼女は首を傾げる。
「君がくれたのに」
ずっと前だけどね、と彼は続け
彼女に背を向けて作業を再開させる。
「次の年はクッキー。これは少し焦げてたね。その次の年は
カップケーキ。これは中々の出来だったよ。で、次の年は…」
「あの…!」
雲雀の言葉を遮るようにイーピンが言葉を発した。
彼が振り返ると、うつむいた彼女がすぐ側に来ていた。
おそるおそる彼のシャツの腰元を掴み、潤んだ光沢を持つ
黒髪から覗く耳は紅く染まっている。
言いたいことは沢山ある。
でも今言わなければいけないのは、多分、これだけ。
「雲雀さん、今年の誕生日は何が欲しいですか?」
「君が側にいてくれれば、それでいいよ」
彼は彼女に視線を合わせ
掠めるようなキスをした。
(その言葉がどんなに嬉しくて、どんなに私を困らせるか
貴方は知っていますか?)
END
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ゆきちゃんの所から強奪してきた雲雀誕生日フリー小説♪
素敵な3本立てに胸キュンしたよvvv
ピンが可愛くてたまらない!!!
佐保ゆき様のブログへはこちらから『虹色模様』