朝特有の凛とした空気が開けた窓から入ってくる。 花の甘い香りをほのかに含んだ風がカーテンを揺らしながら髪を撫でていくのを感じ、それでも神経を耳に集中させた。 正確には耳に当てている携帯から聞こえる声に。

「おめでとうございます」

電話越しに聞こえてくる数日ぶりの彼女の声はいつもより弾んでいて、嬉々としている。

「別にめでたくないんだけど」
「もう、またそういうこと言うんですから」

ダメですよ、なんて言う彼女はきっと苦笑しているに違いない。 電話越しなのに彼女の表情をすぐ目の前にいるかのように思い浮かべることができて、知らず口元が緩む。 こんな自分を、昔の僕はどう思うだろうか。

「でもびっくりしました。まさか恭弥さんから電話があるなんて思ってなかったから」
「何それ」

せっかく連絡したというのに。 彼女の言い分に思わずむすっとした口調になれば、それを察したように携帯からクスクスと笑い声が響いた。

「だってしばらくはあちこち飛び回るって言ってたから。あまり期待してなかったんです」

だから拗ねないでくださいよ、だなんて。 彼女も出会ったときに比べると随分と変わった気がする。 昔は僕の言動にもっと素直に反応を返してきたのに。 今ではさらりとかわすことも増えてきた。 だがそれも永い時間を共有してきたが故だと考えると、その変化さえも愛しく思える。

「それで?これはどういうことなの」

そう言いながら指に挟んでいる便箋をピラピラと揺らす。 その手紙は朝一で哲から渡されたもので。 これを見るまでは今日は連絡するつもりはなかった。

こちらの動作が見えていないはずの彼女は、だがしっかりと僕の言いたいことがわかってるらしく

「草壁さん渡してくださったんですね」

よかった、と安堵の息を漏らした。
そして

「何って誕生日プレゼントですよ?草壁さんから聞きませんでしたか?」

どこか楽しそうにそう聞き返してきた。

確かに哲からこの紙を渡された時、「イーピンさんからの誕生日プレゼントだそうです」と言われた。 だからこそすぐに目を通したのだし、その内容にこうして朝から携帯を手にしているのだ。

しかし彼女の反応を窺う限り、ここに書かれていることはただの冗談ではないようだ。 というか彼女はこんな嘘を吐くような性格ではない。 そんなことよくわかっている。

今一度、先ほど目を通した手紙を見る。 手紙に綴られていたのはたった一行。 だけどそこに書かれていたことはこの僕を驚愕させるのには十分で。

「・・・・・・はぁ」

珍しく動揺している自分を落ち着かせるために一度深く息を吐けば、 まるで悪戯に成功した子供のように嬉しそうに「喜んでもらえました?」なんて言ってくる。

全く、本当に彼女には敵わない。 こんなにも僕の心を揺さぶれるのは、間違いなく彼女一人だけ。 胸の奥から愛しさと喜びが溢れ出て、今すぐに彼女を抱きしめたいと思ってしまう。

今まで何度となくこの『5月5日』という日を過ごしてきたが、 今年の今日という日だけは何があっても忘れられないだろう。

それだけのものを、かけがえのない喜びを彼女はくれたのだから。

「・・・ねえ、ピン」
「はい」
「ありがとう」




それは 尊い贈り物




   恭弥さんへ




   新しい命を授かりました




             ピンより
                       」




END
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Buon Compleanno☆雲雀 恭弥!!!

非常に遅くなってしまいましたが、雲雀さん誕生日記念です。
一ヶ月遅れな上、意味不明すぎてごめんなさい(><)
ピンが妊娠しましたよー、それを誕生日のサプライズとして報告しましたよーというお話です。
ちなみにこの雲雀とピンはすでに夫婦です。
だからピンも雲雀に対して少し余裕があるんです。

非常にお待たせしてしまったお詫びに、こちらの作品はサイトを閉鎖するまではずっとお持ち帰り自由とさせていただきます。

2010.06.05