この日イーピンの部屋は荷物でごったえする。
イタリアから兄のように慕う優しい人や、その守護者達から沢山のプレゼントが贈られてくるのだ。
その量は年々多くなっているとイーピンは少し申し訳なく思う。
でもその心遣いは本当に嬉しかった。

「今年はダンボール3つかぁ…」

部屋を占拠する大きな箱とにらめっこする。勉強机の上には日本に残った京子やハル、そしてイーピンの母親代わりでもある奈々からのプレゼントが並んでいる。

その中に『彼』からのものはない。

あったら逆にびっくりするかな、とイーピンはくすりと笑ってしまう。
もうずっと会っていないのに目を瞑ればはっきりと思い出せる。
その位にイーピンの初恋はいまだ続いていた。

すらりと高い背に、黒く艶やかな髪。
鋭く強い瞳に、長くしなやかな手足。
女の人よりずっとキレイな青年。
それがイーピンの初恋の相手『雲雀恭弥』だった。
己のみを信じ、群れるのを嫌う孤高の浮雲。

でも少しだけ優しいのをイーピンはよく知っていた。
イーピンは幼い頃雲雀に稽古をつけてもらっていた。
彼女の類まれなる才能に彼が目をつけたのだ。
手合わせをするとき、彼は手を抜かなかったし、思いっきりダメだしすることもあった。
でも良くできれば褒めてくれた。綱吉とは違う、大きな少し骨ばった手でイーピンの頭を撫でながら。彼女はその手が何より好きだった。
彼は誰かの機嫌をとるようなことは言わなかったし、嘘もつかなかった。
だからイーピンはまだ心の何処かで雲雀がイタリアに発つときの言葉を信じていた。

―― またね ――

彼は確かにそう言った。
自分でもバカだとイーピンはそう思う。気まぐれかもしれないその言葉をこんなにも信じているなんて。

(仕方ないよ。だってまだ…―― )

ピンポーン

突然典型的なインターホンの音が部屋に響く。いつもなら確認して開けるドアをこの時に限って何も考えずに開けたことを、イーピンは酷く後悔することになる。

「仮にも若い女の一人暮らしなんだから、確認とかしたらどうなの?」

記憶よりも少し低い声に、変わらず強い光を放つ瞳。
記憶の中と目の前の『彼』が重なって、懐かしいのに初めて会ったような錯覚に陥って、うまく言葉が、思考がまとまらない。

「邪魔するよ」

そんな彼女を気に留めることなく『雲雀恭弥』はずかずかと彼女の部屋に入りイーピンが現状を理解する頃には彼女の勉強机の椅子に当たり前のように座っていた。


「雲雀さん?!ど、どうして?!」

未だうまく言葉の出ないイーピンの頭の中は疑問符でいっぱいだった。
それをまとめたいのに思考も未だうまく働いてくれない。

「君に逢いにきたんだよ」

さらりと言われてしまえば、彼女の思考はショート寸前だった。
でも、や、だって、とまともな言葉がでらず、ただ困り果てたように自分を見つめるイーピンに雲雀はほんの少し視線を柔らかくした。

「またねって言っただろ?」
「だって、それは…!!」

そう、それはずっと前のことだ。ずっと、ずっと前のことだ。

「覚えてたんですか?」
「僕が君に嘘を言ったことがあったかい?」

ふるふるとイーピンはうつむいてかぶりを振った。
これ以上彼の顔を見ていると切なくて嬉しくて泣いてしまいそうだった。

「今日で16になるんだったね」

彼女が小さくうなずくのを確認して雲雀は言葉を続ける。

「僕からは『僕と群れる権利』をあげる」

その言葉にイーピンはゆっくりと顔を上げる。
いつのまにか、彼は彼女のすぐ前に立っていた。

「群れる…権利…?」

揺らぐ黒い瞳にはうっすらと潤んだ不安定な膜が張っている。
雲雀は自分がこれから告げる言葉がその膜を壊してしまうことを知っていた。

「君に僕の『恋人』のイスをあげる」

そういう意味だよ。
と、雲雀は壊れて彼女の頬を伝う膜の欠片をぬぐいながらそう言った。

イーピンは信じられない気持ちでその言葉を聞いていた。
これは夢かもしれないとも思った。瞬き一つしたら彼は消えてしまうのではないだろうか?
ゆっくりとイーピンは瞬きをする。でも頬を伝う涙をぬぐう少し冷たい指も、彼も消えたりしなかった。
嗚咽をこらえながら彼女は声を出した。

「私、雲雀さんと10歳は離れてますよ?」
「関係ないよ」

「私、殺し屋辞めちゃいましたよ?」
「別に辞めたからって、君の素質がなくなるわけじゃないだろ?」

「私…っ、私は…」

何が言いたいのかイーピンにはわからなかった。
涙だけがとめどなく流れて、情けなくて、うつむいた。

「嫌かい?」

その言葉にイーピンは大きくかぶりを振る。
嫌なわけがない。ただ嬉しすぎてどうしたらいいのかわからないのだ。
彼女は彼の言葉に応える術を知らなかった。

そんな彼女の気持ちを読んだように雲雀は言う。

「 簡単だよ」

しなやかな長い腕が彼女の腰を引き寄せる。
唇をイーピンの耳に寄せてしびれるような吐息と言葉を吹き込む。

―― ありがとうって、僕をもらって ――


10年も僕を待たせた君に、拒否権なんてないけど



END ********************************

ヒバピン絵チャで知り合った佐保ゆき様のところから頂いてきましたvvv
くはぁ〜雲雀さんがプロポーズしてますよ!プ・ロ・ポ・ォ・ズ!!!
群れる権利私も欲しい!!!
恋人のイスはイーピンのなのはわかってますvvv
なんだこの素敵空間vvv
佐保様、貴方は天才だ///
私にもこんな文才が欲しい・・・。
佐保様ホントーにありがとうございました☆★☆
佐保ゆき様のブログへはこちらから『虹色模様』