繋いだ手が離れたら




鮮やかに咲き乱れる桜並木。 ひらひらと舞い散る花びらが時折視界を掠めるが、それに構うことなく歩を進めれば目的の場所にはすぐ着いた。

並盛神社裏にある巨大な桜の木の下。 枝をこれでもかとばかりにあたり一面に伸ばし、大量の花を咲かせるそれは一種の幻のよう。 だが風に揺れ動き、葉を鳴らし、花弁を降らすそれは間違いなく本物で。

「綺麗……」

足を止め、すぐ後ろをついてきていた少女をちらりと見れば、 舞い踊る桜の花びらに頬を淡く朱に染め、目の前の景色を食い入るように魅入って感嘆の声を漏らしている。



神社の前にいた少女を偶然見つけ、気がつけばその手を取っていて。 そのまま有無を言わさずここまで引っ張ってきた。 自分でも何故そんな行動をしたのかわからない。 ただこの少女の顔を見た瞬間、脳裏に浮かんだこの風景を見せたいと思った。

目を細め、幸せそうに微笑む表情を見ると不意に胸の奥がざわめく。 一体なんなのか。 こんな感情、自分は知らない。

胸を支配する、正体不明の感情。 だがそれは不快ではなく、むしろ心地よいもので。 それは明らかに目の前にいる少女から与えられたものだと理解する。

くるりとした大きな瞳。
すらりと伸びた長い手足。
腰まで届く鮮やかな黒髪。

その姿は、自分の知っているイーピンとはあまりにもかけ離れていて。 でも

自分を見る純粋で真っ直ぐな視線。
敵意を全く含まない無邪気な笑顔。
好意を持って名を呼ぶ声。

今と変わることのないそれらが目の前の少女が間違いなくイーピンであると示す。

『イーピン』ではない『イーピン』

自分にとってただそれだけの存在であったはず。 なのにこうして共にいる時間を求めるなんて。



桜を見つめるその横顔をじっと眺めていると、見られていたことに気がついたのか少女がくるりとこっちに顔を向けた。 そして少し照れながらも笑みを浮かべ、小さくお辞儀をする。

「こんな綺麗な場所に連れて来てくれてありがとうございました」

花が咲き綻ぶような笑顔。 だが次の瞬間何かに気づいたようにその顔が朱に色付く。

「それで、その………」
「なに」
「えっと……手が…」

言い辛そうに小さな声で呟く少女の視線が未だ繋いだままの手に向かっていることに気づき、 何を言いたいのかを理解した。 恥ずかしそうにこちらを見上げてくるその瞳に、しかし少女の望みとは反対の言葉を返す。

「嫌だ」

そう答えれば少女の目が驚きに見開かれる。 その瞳を真っ直ぐ見据えたままさらに言葉を紡ぐ。

「だって、この手を離してしまえば君はいなくなるんだろ」

ここではない、遠い未来へ。
自分の手の届かない場所へ。
『自分』ではない『自分』の元へ。

何故なのかはわからないが、それは酷く不愉快なことで。



「だから――」




言葉の代わりに繋いだ手の力を強めた。








END


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☆携帯20000HIT&PC一周年お題フリリク☆
篠陸ぐー様よりお題リク『ヒバ+10ピン』で『繋いだ手が離れたら』でした。
本当に遅くなってしまい申し訳ないです。
しかも明らかにお題から脱線してるし、意味不明文だし…orz
せっかく素晴らしいお題をくれたのにごめんよぉ〜(つ´д`)つ
返品、苦情、修正は24時間受け付けてるから。
リクありがとうございました!

こちらは篠陸ぐー様のみお持ち帰り可です。

2009.04.16