「私、今度結婚するんです」
そう言って微笑む彼女を誰よりも綺麗だと思った。
君に捧げる花束を
いつものようにイーピンと公園で会っていたら、例によって現れた10年後の彼女。
地面に座ったままきょとんとした顔をしたけど、すぐに状況を飲み込んだのか、「こんにちは」とはにかみながら挨拶してきた。
とりあえずいつまでもそのままでいるわけにも行かないので、その手を引っ張り起き上がらせ、そのまま近くのベンチに座らせた。
隣にある自販機で紅茶とお茶を買い、紅茶を彼女に渡せば、「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑み、缶に口を付ける。
彼女の隣に座って自分もお茶を飲み、流れる沈黙。
彼女は時々現れるけど、いつも特別な会話などしない。
するとしても本当に些細な事だけ。
5分なんて本当にあっという間で、すぐに経ってしまうから。
僕自身未来に興味は無いし、彼女も「未来のことは教えないようにって言われてるんです」と言っていた。
だから今日もそうやって時間が流れるものだと思っていた。
でも、彼女の口から出たのは普段とは違う意味ある言葉。
そして、幸せそうな笑顔。
その言葉を聞いたとき、なんとも言えない感情が頭を駆ける。
その感情がなんなのかいまいちよくわからないが、少なくともいい感情ではない。
けど、目の前で微笑む彼女が本当に幸せそうで、この感情をぶつけるべきじゃないと感じた。
渦巻く感情を抑え、なんでもないように彼女の方を向く。
「ふーん」
「おめでとう、とは言ってくれないんですか?」
「相手は誰なの?」
不服そうにこちらを見る彼女の言葉を聞こえなかった振りして、言葉を紡ぐ。
彼女は困ったように人差し指を口に当て、「秘密です」と言う。
「僕に秘密なんていい度胸だね」
「だって、雲雀さんに言っちゃったら未来変わっちゃいそうですから」
「どういう意味?」
「雲雀さん相手知ったら咬み殺そうとか思ってるでしょ」
「それじゃ困りますから」と楽しそうにクスクス笑う。
それはつまりその相手は僕が知っている人間だということ。
「どんなやつ?」
「んーと、そうですね。不器用で、人付き合いが苦手で、子供っぽくて、でもとっても優しい人ですね」
「そいつのこと好きなの?」
「はい」
一切の迷いも無くきっぱりと答えた彼女。
それだけその相手のことが好きなんだろう。
僕の知ってる『イーピン』は僕のものだけど、
目の前にいる『イーピン』は僕ではない誰かのものなのだとはっきり突きつけられた。
沈黙だけが流れていく。
「そろそろ5分経ちますね」
そう言って彼女はベンチから立ち上がり、ぱたぱたとスカートの埃をはたく。
それからくるりとベンチに座ったままの僕に振り返ると「ご馳走様でした」と頭を下げた。
ふと左手の薬指に光る小さな指輪が視界に入る。
小さな輝きを持つその指輪は、彼女にはとてもよく似合っていて。
「雲雀さん」
「何?」
顔を上げると彼女の大きな瞳と目が合った。
そして
「私待ってますから、十年後ちゃんと迎えに来てくださいね」
彼女は最高の笑顔とともに白煙の向こうに消えた。
(…十年後も君は僕のものなんだね)
END
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仕事中に浮かんだネタ。
時間軸としては5年後くらいを考えて書きました
本当は間がもうちょっとあったんですが、カットしました^^;
まあ要するに大人ピンが結婚する相手は未来の雲雀さんってことですよ。
相変わらずグダグダですみません。
2008.05.18