*那千*


「那岐どうしたの?」
「いいからちょっと黙っててよ」
「えっ………んっ…」

部屋に戻るなりいきなり引き寄せられて、那岐の細い腕に閉じ込められた。
彼らしくない行動に何事かと問いかければ、口をキスによって塞がれる。
突然のことに驚くも、すぐに那岐に応えるように瞳を閉じ、その甘い感触に酔いしれる。

しばらくして離れた唇に、閉じていた瞳を開けば、すぐ目の前に那岐の顔がある。
回された腕が外されることはなく、それどころか更に力が入ったのがわかる。

互いの鼓動が聞こえてきそうなほど密着する身体。
触れ合った部分から伝わる那岐の温もりが じわりと自分の身体に沁みこんでいくかのように満たされる心。

やっと手に入れた温もり。
こうして触れ合うことのできる幸福。
それらを手放したくなくて、那岐の服をぎゅっと掴む。
そうして那岐の翡翠の瞳を見つめる。

「ねえ、那岐」
「何?」
「もう一回、キスして?」

この幸福が夢ではないと教えてほしいから。

そう言えば、那岐が仄かに微笑んだ。







END