*ヒノ弁*
「くり、すます……ですか?」
「ああ。望美達の世界では今日をそう呼ぶんだってさ」
小さく首を傾げながら問いかけてくる弁慶に、
ヒノエはいつものように口端に笑みを浮かべて答える。
「なんでも恋人達が贈り物をしあって愛を確かめる日らしいぜ」
「そうなんですか。望美さん達の世界には面白い日がありますね」
軽く感心した後、楽しそうにクスクス笑い始めた弁慶。
そんな弁慶に顔を近づける。
「で、俺の可憐な姫君は何か欲しい物はあるかい」
「……はい?」
ヒノエの言葉に目を軽く見開き問いかける。
「言ったろ。恋人達が贈り物をしあうって」
だから俺はアンタに何かあげたいんだけど?
そう言って至近距離で笑う。
いきなりのことで思考がついていかない弁慶をよそに
ヒノエは楽しそうにその顔を見ている。
そして不意に何かを思いついたかのようににやりと笑うと
目の前にある弁慶の唇に口付ける。
「なっ……」
完全な不意打ち状態に固まり、弁慶は頬を紅く染める。
ヒノエはそんな弁慶の様子に満足したのか、そのまま弁慶から離れ、部屋の入り口へと向かう。
そして部屋を出て行く直前、少しだけ振り返り
「アンタからの贈り物は今のでいいよ」
意地悪い笑みを浮かべながら去っていった。
END