視界を滲ませていた涙を拭えば、世界の全てがはっきりと見えて、目の前にいる人が幻ではないと教えてくれた。

「健勝そうだな」
「はいっ。斎藤さんもお元気そうでよかったです」

目の前に立つ斎藤さんを見上げ、精一杯の笑顔で返せば目元を微かに和らげて微笑んでくれて。 その表情はあの頃と変わっていなくて、それだけでたまらなく嬉しい気持ちになる。

「斎藤さんも生まれ変わっていらしたんですね」
「ああ、おかげさまでな」
「こうして再びお会いできて本当に嬉しいです」

同じようにこの時代に生まれ変わり、しかも自分のことも覚えていてくれて。 こうして再び会うことができて。 それがどんなに凄いことか。 止めどない嬉しさが胸中を締め付ける。

「俺だけではない。当時の新選組幹部の者達も大半が同じように生まれ変わってこの町にいる」

斎藤さんの言葉にさらに心が震える。 彼らに再び会えるという喜びが胸の奥から溢れて、頬に熱が集まるのが自分でもわかる。 それに、と続けた斎藤さんの瞳が一段と和らいだ。

「総司もいる」

どくん、と胸が高鳴る。

斎藤さんの口から切望していた彼の名が出た瞬間、瞳から堰を切ったように涙が溢れるのを止めることができなかった。




彼が。



誰よりも愛した彼が。



この時代に、この世界に、この町にいる。



会いたい



会いたい



総司さんに会いたい



心に浮かぶのはただそれだけ。





「大丈夫か」

涙を拭うこともしない私に斎藤さんがハンカチを差し出してくれる。 すみません、と小さく頭を下げて受け取ると気にしなくていいと返してくれて。 ハンカチで涙を拭っている間、斎藤さんは静かに私を見守ってくれた。

なんとか涙を拭い終わった時、鞄の中から聞き覚えのある音楽が流れて、それが携帯の着信だと気づくと急いで鞄から取り出す。 ディスプレイに表示されたのは薫の名。 慌てて腕時計を見ると薫との約束の時間をすでに過ぎていた。 斎藤さんにすみませんと断ってから、鳴り続ける電話にでるとすぐに薫の呆れたような声が聞こえてきた。

「千鶴、今どこ?とっくに時間過ぎてるんだけど」
「ごめん」

どう考えても私が悪いと素直に謝れば少しだけ声音が優しくなった。

「とりあえずさっさと来なよ」
「あ、えっと、うん・・・・・・でも・・・」
「なに?まだなんかあるの?」
「そうじゃないんだけど・・・」
「なら早く来なよ」

言い切られるのと同時にぶつっと電話が切れた。 これ以上薫を待たせる訳にもいかないからもう戻らなくちゃいけない。

それでもまだいろいろと話をしたいし、聞きたいこともたくさんある。 どうしたらいいのかと携帯を握ったまま困惑する私に、斎藤さん申し訳なさそうな顔をした。

「すまない、用があったのか。引き留めてしまったな」
「いえ、そんなっ・・・・・・」

首と手を振って全力で否定する。 そんな顔をしないでほしい。 会いたいと願っていたのは私で、会えたことが嬉しくて時間を忘れてしまったのも私。 斎藤さんには何の非もない。 むしろ再び会えたことに感謝したいくらい。

ふと思い至って鞄に携帯を入れて代わりに手帳とペンを取り出すと、そこに急いで自分の携帯番号を書き付けた。 そしてそれを斎藤さんにすっと差し出す。

「あの、これ私の携帯の番号なんです。もし何かあったら連絡してください」
「わかった」

斎藤さんは紙を受け取ると小さく折り畳んで胸ポケットに丁寧に入れた。

「また、会えますよね」
「ああ」

当然のことだと言わんばかりに躊躇いなく返された答えに頬が緩む。 次があることがこんなにも嬉しいことだと、今まで知らなかった。

「それじゃあ失礼します」

ぺこりと頭を下げて斎藤さんに背を向け、後ろ髪を引かれる思いで待ち合わせの場所へと足を進める。 途中で振り返ればまだ斎藤さんが優しい瞳で見守ってくれていて、全てが夢じゃないのだと信じることが出来た。








〜続〜
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沖千転生パロ第四話。
相変わらずの亀更新で申し訳ありません。
今までのペースではいつまでたっても終わらないなぁと思って今回から一話に書く量を増やしました。
なのでまた更新が少し遅くなるかもですが、それでもちゃんと完結させたいと思ってますので末永くお付き合いください。


2009.12.14