記憶よりも短くなった髪が柔らかな春の風に靡いて、肩の上でさらさらと揺れている。
彼にしては珍しい動揺を露にした面持ちでこちらを見つめている。
私も目を見開き、瞬きさえ忘れて彼の顔を見つめたまま、動くことが出来ない。
まるで二人の間だけ時間が止まってしまったみたい。
二人の間を薄紅の花弁がひらりと舞った。
新選組三番組組長、斉藤一。
あまり表情には出さなかったけれど、慣れない生活の中でいつも気配りをしてくれた優しい人。
誰よりも武士として生きることに誇りを持ち、それを最後まで貫き通したと後に聞いた。
その彼が今、私の目の前にいる。
あの頃と変わらない優しさを宿した瞳で。
遠い過去の記憶を取り戻してから、ずっと心の奥にくすぶっていた不安。
彼らは本当にこの時代に生まれ変わっているのか。
たとえ生まれ変わっていても新選組のことを、そして私のことを覚えてないかもしれない。
彼らに会いたいと、もう一度共に過ごしたいと願っているのは自分だけなのではないか。
その不安に胸を押し潰されそうになって、何度も涙を流した。
それでもどうしても会いたいという願いだけは捨てきれなくて、僅かな希望を胸に抱き続けてきた。
でも今、斎藤さんは間違いなく私を「千鶴」と呼んでくれた。
それは斎藤さんが私を、新撰組と共に生きた「雪村千鶴」を覚えているということ。
それがどうしようもないくらいに嬉しくて、熱くなった眦から一粒の滴が静かに流れた。
「久しいな」
どれだけそうしていたか。
先に言葉を発したのは斎藤さんだった。
優しく細められた瞳に見つめられて、はっと我に返る。
「はいっ」
感動で震えそうになる声に力を込めて答え、斎藤さんに近づくために足を一歩踏み出した。
〜続〜
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沖千転生パロ第三話。
お待たせしてしまってすみません。
しかも今回は短めです。
まぁここが一番区切りやすかったというだけですが。
そしてこの話は決して斎千ではありません。
間違いなく沖千です。
書いてる自分でもあれ、なんだこの斎千展開とか思ってしまいました(笑)
次はなるべく早めに更新できるように頑張ります!
とりあえず早く出て来い沖田さん。
2009.11.12