久しぶりに愛しい少女に会おうと、彼女の住む家を訪ねてみれば、
部屋の中、それなりの範囲敷き詰められた紙の中心に座るリタが視界に映って。
思わずそのまま入り口で立ち尽くしてしまった。
「えーっと、リタっち……なにしてんの……」
「なにって、見てわかるでしょ」
こちらにくるりと振り返り、座ったまま見上げてくる。
その手には鋏がしっかりと握られていて、ますます意味がわからない。
「いや、わかんないから聞いてるんですけど…」
「暑くてうざくなったから、髪切るのよ」
そう言って髪を一房摘まんでこちらに見せ付けるように示す。
確かに数ヶ月前に逢った時よりも随分と伸びた気がする。
「……まさかリタっち自分で切るつもりなの……」
「あたりまえでしょ。他に誰が切るって言うのよ」
リタはわかりきったことを聞くなと言わんばかりにこちらを睨んでくる。
確かにこの家に住むのは彼女一人だが、髪を切るくらい他の人に頼めばいいではないか。
親友であるエステルも結構な頻度でここに来ているはずだ。
彼女にでも頼めばいい。
彼女なら快く引き受けてくれるだろう。
軽くリタの辺りを見てみても鏡らしきものさえ見当たらない。
これは完全に勘だけで切るつもりだったということで。
仮にも年頃の女の子がそんなにも適当でいいのか。
いや、本人はそういうことを全くと言っていいほど気にしない性格なので
いいのかもしれないが、こちらとしては少し複雑な気分だ。
しょうがない、と深いため息を一つ吐いてリタに近づくと
その手にあった鋏を奪い取る。
「あ、ちょっと!返しなさいよ」
「だーめ。リタっち不器用だから見てるのなんか怖いし」
「余計なお世話よ!」
「ほらほら座って。おっさんが切ってあげるから。おっさんリタっちより器用よ〜」
立ち上がって鋏を取り返そうとするリタの肩を押さえれば、
頬を脹らませながらも渋々腰を下ろす。
その後ろに回って自分も腰を下ろせば、共に旅をしていた頃よりも長くなった茶色の髪が目の前で揺れる。
試しにそっと触れてみれば、さらりとした感触が心地よくて。
切ることをもったいなく感じた。
「本当に切っちゃうの?なんかもったいないんだけど。せっかく綺麗な髪なんだし」
思ったままに口にすれば、リタの肩が僅かに跳ねる。
髪の隙間からちらりと覗く耳が赤く見えるのはおそらく気のせいではない。
「もしかしてリタっち照れ…「いいからさっさと切って!」
こちらの言葉を遮るように大声を出すその顔もやはり赤くて。
そんな彼女の反応に愛しさが溢れる。
だがこれ以上追求してしまえば、間違いなくリタの機嫌を損ねる。
久しぶりに逢ったのに、家から追い出されてはたまらない。
「んじゃ切るけど、どれくらいまで切っちゃっていいわけ?」
「旅してた時と同じくらいでいいわ」
「りょーかい」
鋏をリタの髪に当て、少しずつ、慎重に切っていく。
手を動かすたびにぱさりと音をたて鮮やかな茶が足元に落ちてゆく。
互いに無言のまま、室内には鋏の音だけが響いた。
不器用な
君
END
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中途半端になった…orz
要はおっさんに髪を切ってもらうリタが書きたかっただけなんです。
元々拍手お礼用に書き始めたんですが、ちょっと長くなったので普通にUP。
2009.07.19