ある穏やかな秋の日の出来事
曇りがちの空、吹き抜ける冷たい風、風に踊る落ち葉。
先週まで暖かかった世界も一気に冬に向けて姿を変え始めた。
ハロウィンが終わると同時に、クリスマス色に彩られた町。
さすがにまだイルミネーションなどを飾っている場所は少ないが、
所々に置かれている綺麗に飾り上げられたクリスマスツリーや、
色とりどりのオブジェなどは見る者の心を躍らせる。
世界を茜色に染めていく空を眺めながら、
草壁は風により冷たくなった手をコートのポケットに入れ、足を進めた。
向かう先は並盛町地下にある、風紀財団アジト。
「哲、明日は好きにしなよ」
昨夜、上司とも言うべき雲雀に告げられたのは突然の休暇。
今までになかったことに首を捻ると、雲雀が何か文句でもあるのかと鋭い目で睨んできた。
おそらくイーピンがアジトに来るのだろう。
二人の時間を邪魔されたくないらしい。
ならばとありがたく休みを貰うことにしてその場を去った。
とは言っても、突然の休みでやることもない。
行きたい場所もないし、買出しなども先日済ませたばかりだ。
仕方がないので久しぶりの故郷をぶらぶらしてみた。
アジトに着いて部屋に荷物を置くと、雲雀の部屋に向かう。
帰ったことを伝えるためだ。
廊下を進めば、雲雀の部屋から明かりが零れている。
どうやら部屋にいるようだ。
部屋の前に着くと襖を小さくノックする。
「失礼します」
「入りなよ」
襖を開けて入れば向かい合って座る雲雀とイーピンの姿が目に入る。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、草壁さん」
にっこりと返事をしたのはもちろんイーピンで、雲雀は視線を少し向けるだけだ。
「イーピンさん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「はい、おかげさまで。草壁さんも怪我とかしてませんか?」
「ええ」
「よかった」
両手を合わせて微笑むイーピン。
草壁もそんなイーピンに微笑み返す。
「では、自分は失礼しますね」
「あっ、ちょっと待ってください」
二人の邪魔をしては悪いと颯爽と立ち去ろうとした草壁を、イーピンが慌てて引き止める。
草壁は何かあるのかと足を止め、そのまま様子を見守る。
イーピンは足早に部屋の隅に置いてあった自分の荷物のところに行くと四角い包みのようなものを手に持って戻ってくる。
そしてそれを草壁に差し出した。
「イーピンさん?」
「これっ、草壁さんにプレゼントです」
少し照れくさそうに笑いながらイーピンは言う。
草壁は突然のことに一瞬動きが止まったが、イーピンの声に反応したかのように動き出し、
イーピンの手にあるものを見つめる。
「プレゼント…ですか?」
「はい」
「私に、ですか?」
「そうですよ」
綺麗にラッピングされた長方形の箱は、間違いなく草壁に差し出されている。
ゆっくりとその包みを受け取ると、イーピンは嬉しそうに笑った。
そんな状況に草壁は首を捻る。
なぜ雲雀ではなく自分にプレゼントが渡されるのか。
全くもって理由がわからない。
そっと横目で見てみると、雲雀は若干不機嫌そうではあったが、仕方がないというような顔をしている。
それもまたおかしな事だ。
そんな思いが顔に出たのか、イーピンが目をきょとんとさせて草壁の顔を覗き込む。
「草壁さん、もしかして今日何の日か忘れてます?」
「今日?」
何かあっただろうか。
頭を働かせてみるが、全くもって思い浮かばない。
勤労感謝の日かとも思ったが、それは2週間後だ。
小さく首を捻る草壁に、イーピンはどこか呆れたような、諦めたようなため息を吐いた。
「まさか、草壁さんまで忘れてるなんて……」
「だから言っただろ。絶対に忘れてるって」
「でも普通は忘れませんよ」
「そうでもないよ。むしろ僕にしてみればわざわざ覚えてる方が不思議だ」
「全然不思議じゃありません。だって大切な日ですよ!」
「あ、あの・・・私には何のことだかわからないんですが……」
軽く言い合う雲雀とイーピンを止めるように草壁が口を挟む。
イーピンはくるりと草壁の方に向きなおしてじっと草壁の瞳を見て、口を開いた。
「今日は11月9日ですよね」
「…そうですね」
小さく頷き同意する草壁に、イーピンは満面の笑みを見せる。
「お誕生日おめでとうございます」
「は?」
草壁は一瞬で頭が真っ白になり、間抜けな声を発してしまう。
そして告げられた言葉をゆっくりと思い浮かべる。
誕生日。
言われて初めてそのことに思い至る。
11月9日は確かに誕生日だ。
けれどさすがにこの歳にもなれば誰も祝ってくれる相手などいないので、
誕生日という存在すらすっかり忘れていた。
改めて手に持つ包みをじっと見つめれば、イーピンが楽しそうに笑う。
「それは誕生日プレゼントです」
言われた言葉にハッとなりイーピンを見れば、微笑んだまま草壁を見ている。
誕生日プレゼントなんて貰うのはいったいいつぶりだろうか。
無意識に包みを持つ手に力が入る。
今思えば、今日の休暇も雲雀からの誕生日プレゼントだったのかもしれない。
雲雀の方を見てみても、表情を変えずに二人のやり取りを見ているだけだが。
「……ありがとうございます」
感激のあまり震えそうになる声を何とか振り絞って礼を言えば、イーピンの笑みが深くなった。
そして草壁の手を取って、部屋を出て廊下を歩き出す。
引っ張られる状態で慌てて歩を進めれば、後ろから雲雀も着いてくる。
イーピンは歩きながら草壁の方に振り返ってにっこりと微笑む。
「台所にケーキも作ってあるんです」
だから食べてください、と楽しそうに言うイーピンに、草壁は
「よろこんで」
そう言って笑った。
今日は人生で最高の誕生日になりそうだ。
そう思いながら。
END
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PCサイト8888HITキリリクでふじこより
『ヒバピン←哲or哲→ヒバピン』ってことだったんですが、リクに合ってないよね…orz
ただの哲の誕生日を祝う話になってるよ。
とりあえず哲の誕生日にあわせてUPしようと思ってたんですが、間に合わずに一日遅れになってしまった(><)
とりあえず土下座で謝罪しますm(_ _)m
しかもリク受けてから大分経ってしまい申し訳ないです。
返品・苦情はいつでも受け付けてるから!
2008.11.10