五分後に逢いましょう
時計の針が時を刻む音が室内に響き渡る。
まだ昼を過ぎたばかりだというのにカーテンが閉められており、室内は薄暗い。
室内には男女が1人ずつ。
男はドアに寄りかかり、女―いやまだ少女と呼ぶべきだろう―は窓際に置いてある椅子に腰掛けている。
男と少女―雲雀とイーピン―はお互いを見ようとも言葉を交わそうともしない。
どれくらいそうしていただろう。
不意にイーピンは椅子から立ち上がると雲雀の下へと歩み寄った。
イーピンはいつものような女の子らしい服装ではなく、以前使っていた赤い拳法着。
髪は動きやすいように普段の三つ編みをさらにまとめてアップにしている。
久しぶりに身につけた拳法着はだけどどんな服よりもしっくりときて、イーピンは悲しいような嬉しいようななんとも言えない気持ちを感じていた。
イーピンはそっと雲雀の左手を取り、ゆっくりと自分の右頬にあてた。
「行くの?」
「はい」
「君はもう殺し屋じゃないのに?」
雲雀がそう言うとイーピンは悲しそうに顔をゆがめ、俯いた。
雲雀にだってわかっている。
イーピンが好きで戦うわけではないと。
それでも聞かずにはいられなかった。
「それでも…」
「それでも?」
「大切な約束ですから」
そう言ったイーピンの瞳には迷いは無い。
十年前に交わした大切な約束。
約束したのは十年前のイーピン。
だけど実行できるのは今のイーピンしかいない。
それがわかっているからイーピンには約束を破ることが絶対に出来ない。
なにより出来る限りで大切な人を守りたいと思っている。
ツナやハルから昨日連絡が入った。
ツナは申し訳なさそうに、でもどこか譲らない口調で頼むと言っていた。
ハルは無理だけは絶対にしないで欲しいと少し涙声になりながら言っていた。
2人とも表の世界で生きることを選んだイーピンに本当ならばこんなことをさせたくは無いのだろう。
だけど状況がそれを許すことは無い。
後数分もすればおそらくイーピンは十年前に行くだろう。
そしてそこに行けば避けられない戦いが待っている。
十年前の今日、イーピンはハルを守るためにランボの十年バズーカを撃った。
それは間違いない事実なのだから。
雲雀はイーピンの右頬にあてていた左手をそのままに、右手でイーピンを抱きしめた。
突然のことに驚くイーピンだったが、やがて両手を雲雀の背中へと回した。
「気をつけて…」
「はい…」
雲雀は願いを込めてイーピンの耳元で囁き、そっと唇を重ねる。
ツナたちはイーピンは無事だったと言っていた。
無傷で相手を戦闘不能にしたのだと。
しかし未来はほんの些細なことで変わる。
少しでも気を抜けば怪我を負うことだってある。
下手したら命を落とすことだって。
定まった未来などどこにも無いのだから。
ゆっくりと唇を離すとイーピンは
「五分後に逢いましょう」
そう言って白い煙の中に消えた。
(こんなに5分が長く感じるのは初めてだ…)
END
********************************************
謝罪
かなり前から考えていたネタ。
黒曜編ってどんだけ時代遅れだよって感じですが(><)
黒曜編で出てきた大人イーピンは戦闘準備万端だったじゃないですか?
たぶん十年後でいつ呼ばれてもいいように待ち構えてたんだろうな思って。
そこから膨らんだ妄想がこんなのに///
絵チャで貰ってくれると言った師匠とゆきちゃんはお持ち帰り可です。
絵チャなどで知り合った方で他に貰ってやってもいいよって方は一言報告いただければお持ち帰り可です。
それではありがとうございました。
2008.01.20