君がいないと生きていけないね




「リタっちはおっさんを残して死んじゃったりしないでね」

読書中のリタの小さな身体を壊さないようにぎゅっと抱きしめる。
普段ならこんなことをすればすかさず繰り出される拳がでてこないのは、彼女なりの気遣いかもしれない。
おそらく彼女は俺の精神状態がひどく不安定なのに気付いているのだろう。
小刻みに震える俺の手に本をめくっていた小さな手を何も言わずに重ねてくれた。
触れ合う箇所から伝わる熱が彼女が今生きていることを示していて、その温かさに安堵する。

「リタっちが死んだら、おっさんは生きていけない」

これは誇張表現などではなく、れっきとした事実。
俺の抱える複雑な心臓を診ることができるのは世界広しといえど目の前にいる天才魔導士のリタだけで、仮にもし他に彼女に匹敵する天才がいるとしても俺は診せることを拒む。
この心臓の珍しさに興味本意で診られるのも、くだらない同情の眼差しを向けられるのも勘弁だ。
そういう意味で俺の命は目の前の少女にかかっている。

けれどそれ以上に彼女の存在は俺の心にとって大きくて、その温もりが、名を呼ぶ声が、まっすぐな瞳が、俺の生きる理由を支えてくれている。
彼女を失えば、心が崩壊する。
身体的な死よりも先に、精神の死が来る。

それは依存にも似た生き方。
だが、俺の世界にリタの存在は必要不可欠で。
彼女のいない世界で生きる意味などない。

リタもそれに気付いているのだろう。
だからただ一言、

「・・・・・・バカ」

と小さく呟いた。






END


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2011.10.12