君の香り
ふわりと鼻先を擽った香りに、雲雀は書類を捲る手を止めた。
甘く、けれども不快ではない優しい香り。
必要最低限の物しか置いてない殺風景なこの部屋にはあまりにも不釣合いで。
視線だけを動かして辺りに微かに漂う香りを辿れば、
たどり着いた先は向かいのソファに腰掛けて同じく書類整理をしているイーピン。
雲雀の視線にも気づかずに、黙々と書類を処理していく。
気づかれないようにほんの少しだけ身を乗り出し、試しに香りを嗅いでみれば間違いないようで。
ふと疑問に思い、問いかけた。
「君、香水なんて付けてた?」
「へ?」
作業に夢中になっていたのか、ペンを片手にうーんと唸り声を上げていたイーピンは雲雀の唐突な問いかけに顔を上げ、
話を聞いてなかったのか大きな瞳をきょとんとさせる。
「香水、つけてるでしょ」
「香水……ですか?」
ペンを持った手を止め、心当たりがないのかぱちぱちと瞬きをして小さく首を傾げる。
そのまましばらく考え込んでいたが、ふと何かに気づいたように、あっ、と声をあげてにっこりと笑った。
「そういえば、今日ビアンキさんがつけてくれたんですよ」
朝、イーピンがツナのところに書類を持って行った時にちょうど任務から戻っていたビアンキと会って、
いろいろと話をしているうちにそういう話になった。
そして、試してみたら、と以前使っていたものをイーピンに少しつけ、残りを分けてくれたのだという。
「すっかり忘れてました」
楽しそうに話すイーピン。
その頬は雲雀に気づいてもらえたことへの喜びと、慣れないことへの気恥ずかしさからうっすらと朱がさしている。
イーピンの話を黙って聞いていた雲雀だがすぅっと立ち上がると机を回り込み、イーピンの隣に腰を下ろす。
そして手を伸ばし、突然の雲雀の動きを疑問を浮かべながら見ていたイーピンの体をそっと抱き寄せた。
「ひ、雲雀さんっ……!?」
驚きで声が若干裏返るイーピンには答えず、雲雀はその細い肩口に顔を埋める。
先ほどよりも強く鼻孔を擽る香り。
ふんわりと包むような優しく甘い香りの中に、どこか刺激的なものが含まれていて。
あまり好きではないはずの甘い香りに、心が満たされる。
(ああ、まるでこの子みたいだ)
初めて会ったときから変わらない、優しい笑顔。
そしてその笑顔に秘められた、何者にも揺るがされない凛とした強さ。
それを愛しく、大切に思う。
「ねえ、イーピン」
顔は上げずに、でもイーピンには確実に届く声で囁く。
「これからも、それ、つけなよ」
えっ?、とイーピンの口から零れる。
けれどそんなのはお構い無しに雲雀は言葉を続ける。
「よく似合ってる」
誰よりも優しく、強い君に。
言葉の終わりと共に顔を上げ、無防備な唇にそっと唇を落とせば、
幸せそうにはにかむ笑顔と視線が絡んで。
雲雀は抱きしめる手に力を込めた。
END
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PCサイト10000HITキリリク雪様より『ヒバピン甘』です。
大変お待たせして申し訳ありませんでしたm(_ _)m
しかもこれは甘いのだろうかと思わなくもないような……。
意味も全く持って不明で…orz
雪様、こんなのじゃ嫌だと!思われましたら、どうぞ遠慮なく言ってください。
その時はちゃんと書き直しますので。
それでは、リクエストありがとうございました!
今後もよろしければぜひ遊びに来てやってください。
こちらは雪様のみお持ち帰り可です。
2009.01.12